今まで上に付けていたスプリントを次回から下に付けるタイプに変えるという。その後はどうするのか。 この歯科医院での治療は、スプリントで上げた分をともかく全体的にアップさせるというものだった。虫歯治療で詰め物が入っている奥歯などは、全部削って作り直し。虫歯のない部分にはレジンなどを張り付けて高さを持たせ、前歯にもそれに応じてセラミックのようなものを張り付けるという。 自分の場合は上の歯はいじらず、下の歯だけに処置をしていくということだった。 下の歯だけ・・・。ここで単純な疑問が生じた。前の歯医者で永久歯を削られた経験から、これ以上歯を削られるのは嫌だったのと、元々の高さが足りないのであれば上下で高さを揃えていく方が理想的なのではないかと思ったのだ。 下の歯だけの処置。奥歯をほとんど削って被せ直す。その説明に少し疑問を感じてしまった。 そこで、ネット上で見つけたある歯科医院に相談してみることにした。メールで現状を説明すると、ご丁寧な返信をしていただいた。好感を持ったので、セカンドオピニオンという形で伺うことにした。 実際口の中を診ていただく前に、その先生から顎関節症治療についての御自身の見解や、現状についての説明を聞かせていただいた。 いろいろな先生の書かれた本や治療法を比較検証されているようで、沢山の本も見せていただけた。顎関節症治療にも学派のようなものが沢山あるらしい。多くの先生が顎関節症についての本を書かれているということを知った。 その先生がおっしゃるには、どの方法も一長一短。完璧と言える方法はまだ確立されていなくて、自分のようにいろいろな歯医者を転々としてしまう患者も珍しくはないということだった。 顎関節症の恐いところは、治療が上手くいかないと最終的には精神に支障をきたしてしまうということらしい。そういった例は少なくないという。 自分も相当精神的に不安定だった時期があるので、それを聞いてありうるだろうなと思った。全然人事ではない。自分も、もしこのまま治らずにスプリント無しで生活しろと言われたらどうなってしまうだろうか。多分2ヶ月ももたないかもしれない。またすぐに寝たきりの生活になるのは確実だ。最悪首でも吊っているかもしれない。 実際悪化して寝たきりの人もいるかもしれないので、ここでこんなことを書くべきではないのかもしれない。しかし、これは事実だ。 顎関節症というのはそれだけ恐ろしい病気だということだ。 その先生の治療方針は、できるだけ削らない。自分の歯を残すということだった。従来の、虫歯ができたらひたすら歯を削り埋めるだけという治療を良くないものとして考えているということだった。 スプリントが良好なので、もう少し様子をみてみることにしたが、その先生の話はすごくためになった。確かに一度削ってしまった歯はいくらお金を積もうが二度と元には戻らない。安易な一削りが後になって体に様々な悪影響を及ぼすことになる。 可能な限り削らない。自分の歯を残す。 よく、歯を大切にとか自分の歯は自分で管理する。守るといった言葉を目にするが、それはきちんと磨くということと同時に安易に削らない。削らせないという意味もあるのだ。歯を守るというのはそういうことだと思う。 そう考えてみると、自分がずっとお世話になっていた近所の歯医者は虫歯になってしまった歯はとにかく削るという治療をしていたように思う。削られた後の歯を舌で触ると想像以上に削られていることが多かった。虫歯をつくったのは自分のせいだし、歯医者はどこでも一緒と思っていた自分が悪いのだが。 しかも、そこで入れてもらった詰め物の形がおかしかったわけだ。左下6番のインレーは食べたものがひっかかるほど隙間があった。それが外れて顎が鳴り出し、長い間放置してしまったために顎関節症になってしまったのだ。治療の腕はともかく、不良インレーだったのは間違いない。 なかなか普通の人が歯科医院をころころと変えるということはしない。大抵近所にある、近いからという理由で歯医者を選んでいるはずだ。そこが総合的にみていい歯医者だったらラッキーだが、ダメな治療をしていたとしたら最悪だ。何度も通って気が付かないうちに歯を破壊され、噛み合わせを狂わされることになる。 最近はこうしてネットを使った情報収集も可能になった。ウェブサイトを運営している歯科医院も多い。治療以前のインフォームドコンセントに力を入れているところも増えてきたようだ。患者はできるだけ情報を集め、歯医者選びには慎重になるべきだと思う。
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