劇的な変化

違和感のあった左側を少し削り、家に帰った間もなくのこと。驚いた事に突然視力が良くなっていた。良くなったと言うより、回復したと言った方が正しいのかもしれない。何気なく壁に掛かったカレンダーなどを見ると、それまでぼやけていた文字が見えるようになっていた。

変化はそれだけではなかった。首が左側に急に回るようになった。首の負担や肩凝りが無くなっていた。おもしろいように首が回る。

そして、その夜寝ていると、それまで冷えがひどくて靴下を履いたまま寝ていたような左足に不思議な感覚があった。足の裏が熱い。暖かい感覚がこみ上げてきて、腰の所で一旦止まると、それが徐々に背中をつたって首に抜けていった。

あれは一体何だったのか?今だに謎だが、こういう体験をすると気とかの存在を否定できなくなる。それまでどんなに熱い風呂に入っても左足、特に膝から下が冷えたままで、一体どうなってしまったのかと思っていた。

歯をほんの数カ所削っただけで、その日のうちにそれだけの変化があったのだ。

そうか・・・やはり噛み合わせが原因だったのか。あの本に書いてある事は正しかった。そう思ったのは言うまでもない。

そこで終わりならば越したことはない。体に良好な変化があったものの、調整した左側は歯が浮いたままだった。歯が噛み合っているのは右側だけで、左は完全に上下が当たっていない状態だった。

後日また調整してくれた歯医者に行き、その旨を伝えるが、なぜか先生が取り合ってくれない。助手の方が先生と自分の間を伝言ゲームのように行ったり来たりするだけで話が進まない。

「いえ、浮いているというのは気のせいですよ。ちゃんと左側でも噛んでますから」そう言って鏡を見せられる。しかし、どう考えても左が変だ。右だけで噛んでいる。

助手の方が最後にこう言った「・・・これ以上はうちでは無理だそうなので、噛み合わせ治療専門の所へ行ってほしいそうです」

噛み合わせ専門・・・歯医者てのは全員噛み合わせのことが分って診察しているのではないのか?そんな思いが頭をよぎった。

だが、これ以上は無理と言われてしまってはしかたがない。その日は絶望的な気分で家に帰った。

噛み合わせや、顎関節症治療について少しでも知識のある方なら、これを読んで「あーあ。バカだな」と思われるだろう。

実際バカだった。歯医者というものを信用していた。外科で病院巡りをした経験から、病院にもいろいろあると知っていたにも関わらず、歯医者というのは他の医療機関と違って、どこへ行っても大して変わらない。どこも一緒だ。くらいの認識しか当時は無かった。

実際、その先生は自分が中学生のころからずっと治療していただいていた先生だし、そこで治療した歯は沢山ある。診療に疑問を持った事は無かった。それ以前に、歯の治療に善し悪しがあるということすら知らなかった。

いずれにせよ、この左が浮いたままの状態を放置しておくわけにもいかず、「噛み合わせ治療」をしてくれる歯医者を探すことにした。

前述の本を書かれた先生の所は遠くて行けなかった。そこで、その本の中に書かれていた、研修を受けて同じ治療法で診療をしているという歯科医院のリストから、通えそうな距離にあるものを選びさっそく予約の電話をしてみた。

 



私の場合メニューに戻る